新鮮であること

初心者からベテランに至るまで、
「初めて起きたこととして新鮮である」ことは大きな課題です。

樹木希林さんとCMの仕事でご一緒した時、
「新鮮じゃなくなるから、リハーサルを繰り返すのは止めよう」と
監督に仰っていたのを思い出します。

あれほどキャリアがある女優さんでも、
新鮮さを失うことの怖さを感じてるのだなあ、と感心したことを思い出します。

しかし、舞台となればそれこそ数えきれないほど繰り返します。
「新鮮さを失うからもう稽古にはいきません」とは言えません。

ある時、深く突き詰めて考えたことがあります。
そこで行き着いたのが、
「失う以上に何かを増やしていくしかない」ということです。

営業さんに喩えると分かりやすいでしょうか。
新人でいきなりトップになる営業さんもいれば、
何か月も連続でトップになる営業さんもいます。
新鮮さが経験を上回ることもあれば、
経験がトップを守らせることもあります。

営業として働いたことがありますが、
ある時、長年トップをとっている先輩の執着心に驚いたことがあります。

その先輩は「このお客さんは無理」と諦めることを極端に怖れていました。
お客さんのどんな断りにも折れずにとっかかりを見つけ、
売り込んでいく姿に心底感服しました。

毎月もらえるトップの報奨金で買ったのか、
華やかな洋服に身を包んだ綺麗な女性でしたが、
その泥臭さとのギャップに心底驚いた記憶があります。

営業をやってみて知ったのは、スランプのない人間はいないということです。
そしてトップを取り続ける人の強さとは、スランプをスランプにしない強さだということです。
マンネリ化して新鮮さを失い、成績が落ちることを怖れているかのようでした。

コミュニケーションにおいて新鮮さを失うということは一種の諦めに似ています。
相手に影響を与えることを諦め、伝わるように自分が工夫することも諦めていく。

私はその諦めないことで得られるものの素晴らしさを演劇に教えてもらいました。
そしてその素晴らしさがお客さんに伝わることの感動も知りました。
やっている時は必死なだけですが(笑)

それはスポーツに似ています。
尊敬するドイツ人の演出家トーマス・オリバー・ニーハウスが良く言っていました。
「スポーティに」と。

だいぶ脱線しましたが、次回は演技を通して「諦めないこと」の意味について
お話させて頂きたいと思います。

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